2019年4月に新紙幣の刷新が発表され、2024年の上期を目処に実際に発行される予定です。肖像には日本の歴史的人物が選ばれていますが、具体的に何をしたかを知っている人は少ないのではないでしょうか? そこで今回は、新紙幣の肖像として採用された人物の生い立ちを紹介します。
■今回刷新される新紙幣は3種類
2024年上期に発行予定の新紙幣について、まずはデザインの変更点を説明します。
●偽造防止対策
現在の「すき入れ(すかし)」に加え、高精細なすき入れ模様を導入。「ホログラム」にも、紙幣では世界初となる「肖像の3D画像が回転するホログラム」を導入し、 一万円札と五千円札にはストライプ模様、千円札にはパッチ模様のデザインを採用します。また、記番号が現行の最大9桁から10桁へ変更になるそうです。
●ユニバーサルデザイン
各紙幣の違いを識別しやすくするために、指の感触で識別するマークの形や位置、すき入れやホログラムの位置に変化をつけます。表裏に描かれる額面数字も大きくなるようです。
●表と裏の図柄
一万円札:【表】渋沢栄一 【裏】東京駅(丸の内駅舎)
五千円札:【表】津田梅子 【裏】フジ(藤)
千円札 :【表】北里柴三郎【裏】富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」
ちなみに、新紙幣が発行された後ももちろん現行の紙幣は利用できますよ!
■新紙幣の人物は何をした人? 生い立ちと功績を解説
新紙幣の肖像となる人物はどんな功績を残した人なのか、その生い立ちを見ていきましょう。
●一万円札:渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)
江戸時代後期の1840年、現在の埼玉県深谷市血洗島で生まれ、幼い頃から学問に励みます。20代で江戸に行き、志士らの影響を受け尊王攘夷運動に関わりました。 その後、27歳で「パリ万博使節団」としてフランスに渡り、欧州の先進的な産業や制度を見聞します。
28歳になり明治維新後に帰国した栄一は、翌年、静岡で日本初の株式会社「商法会所」を設立。それが明治政府の目に留まり、大蔵省の官僚として制度作りにも力を尽くしたそうです。
33歳で官僚を辞めたあとは、実業家としての力を発揮します。500もの企業の設立や育成と、600もの教育機関や社会事業の設立にも携わるなど、偉大な功績を残します。 91歳で生涯に幕を閉じた渋沢栄一は、「日本資本主義の父」とも呼ばれ称えられています。
●五千円札:津田梅子(つだ・うめこ)
1864年に現在の東京都新宿区で生まれ、6歳のときに日本初の女性留学生として「岩倉使節団」と共にアメリカに渡ります。ホストファミリーと暮らし、教養を身につけ、勉学にも励みました。
18歳で帰国した梅子は、アメリカと日本における、女性の位置づけや文化の違いに大きなショックを受けます。 このことが、のちの女性教育推進のきっかけとなり、華族女学校の教師になったあとも何度か海外に渡り、女性教育が重要であるとの認識を深めていったようです。
35歳のときに私立女子高等教育の先駆けともなる「女子英学塾」(現津田塾大学)を設立。身分にとらわれず、男性とも対等に渡り合える女性を育成するために、教養だけでなく、実用的な教育にも力を注ぎました。 1929年、病気により64歳でこの世を去った梅子は「女性教育の先駆者」とも言われ、女性の社会進出に大きな功績を残しています。
●千円札:北里柴三郎(きたさと・しばさぶろう)
1853年、現在の熊本県阿蘇郡小国町で生まれ幼少期を過ごし、18歳で熊本医学校(現熊本大学医学部)へ入学し医学の道を志します。
21歳のときに東京医学校(現東京大学医学部)へ入学した柴三郎は、在学中の演説の中で、医者の使命と予防医学の重要性について提唱しています。
1886年、33歳でドイツに留学し、病原微生物の研究に励みます。そして、1889年には破傷風菌の純粋培養に成功、翌年には免疫抗体を発見し「血清療法」の確立に至ります。 まだ伝染病の原因療法が確立していなかった当時の偉大な発見だったそうです。
39歳で帰国した柴三郎は、私立伝染病研究所(現東京大学医科学研究所)を設立し、伝染病予防や細菌学の研究を重ねます。
61歳のときに、医学研究機関である「北里研究所」を設立し、現千円札の肖像として採用され、細菌学でも有名な野口英世など多くの研究者の育成にも力を入れたそうです。 その後、64歳で慶應義塾大学医学科(現慶應義塾大学医学部)の設立や、医学団体、病院の設立にも貢献したのち、1931年に78歳でこの世を去ります。 日本の近代医学の発展に大きく貢献し、予防医学の基礎を作った柴三郎は「日本細菌学の父」として後世に語り継がれています。
■近代日本に偉大な功績を残した人物を称え新しい時代へ
新紙幣に描かれる3人は、現代の日本の礎となった素晴らしい功績のある人物であることが分かりました。2024年に予定されている新紙幣の刷新が楽しみになってきましたね。偉大な人物に尊敬を抱きながら、新しい時代を切り開いていきましょう。